整腸剤=下痢止めは間違い?効果が出ない理由を解説

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先日、下痢の症状で受診されたお子さんのお母さんから、

「昨日から家にあった整腸剤を飲ませているんですが、下痢がよくならなくて…。お薬が古かったんですかね?」

というご質問がありました。

確かに、薬を飲ませたのに良くならないとなると、不安になりますよね。

「効いていないのかな?」

とか、

「飲ませ方が悪かったのかな?」

と、いろいろ心配になってしまう気持ち、よ~くわかります。

でも実は、整腸剤というのは飲んですぐに効果が出るタイプのお薬ではないんです。

そこで今回は、改めて整腸剤とはどんな薬なのか。

そして、どんな効果が期待できるのかということについて、わかりやすくお話していきますね。

整腸剤ってどんな薬?すぐに効果が出ないのはどうして?

『整腸剤』とは、その名の通り腸を整えるお薬のことです。

では、腸の“何”を整えるかというと、腸内環境、つまり腸内細菌のバランスを整える働きがあります。

人間の腸(消化管)の中には、なんと約1,000種類・100兆個もの細菌がすんでいるといわれています。

その中には、体に良い働きをする『善玉菌』(ビフィズス菌や乳酸菌など)と、悪さをする『悪玉菌』(ウェルシュ菌や黄色ブドウ球菌など)などがいて、どちらが多いかのバランスが腸内環境に大きく関わっています。

一般的には、善玉菌が多い状態=腸内環境が良い状態とされています。

しかし、感染性胃腸炎(いわゆる胃腸風邪)にかかったり、抗生剤を服用したりすると、腸内細菌のバランスが崩れてしまい、下痢やお腹の不調が起こることがあります。

そこで整腸剤の出番です。

整腸剤には、善玉菌そのものや、善玉菌の働きを助ける成分が含まれています。

そのため、
・ 下痢と一緒に体の外へ出てしまった善玉菌を補う
・ 抗生剤の影響で減ってしまった善玉菌をサポートする
・ 悪玉菌が増えるのを抑える

といった働きをしてくれるんですね。

そのため、胃腸風邪のときや、抗生剤と一緒に整腸剤が処方されることがよくあります。

また、腸内環境を整えることで便秘が改善することもあるため、便秘のときに処方されることもあります。

 

ここで大事なポイントですが、整腸剤は飲んですぐに効果が現れるお薬ではありません。

腸内細菌のバランスを整えるには、ある程度の時間(日数)がかかりますし、効果が出るまでにも個人差があります。

実際、とある研究では、胃腸風邪のときに整腸剤を飲んだグループと飲まなかったグループを比べたところ、整腸剤を飲んだグループの方が、下痢がよくなるまでの日数が1日〜1日半ほど短かったという結果が出ています。

つまり、整腸剤を飲むと、症状が少し早く楽になる可能性がある、という程度なんですね。

整腸剤は、『飲まないと治らない!』というような絶対に必要なお薬というわけではありません。

あくまでも、「飲んだ方が回復が少し早くなるかもしれない」サポート的なお薬です。

ですので、どうしても飲めないときなどは、無理に飲ませなくても大丈夫なことが多いです。
※ただし、整腸剤以外に「これは必ず飲んでほしい」というお薬がある場合もあります。そこは、医師の指示にしっかり従ってくださいね。

まとめ

下痢などの胃腸炎の症状があるときに処方される整腸剤は、市販でも手に入ることが多く、ご家庭に常備されている方も多いかと思います。

以前処方されたものが残っていて、

「とりあえず飲ませてみよう」

と使うケースもよく見られます。

実際に、

「家にあった整腸剤を飲ませたけど、下痢が良くならなくて…」

と受診される方は、結構いらっしゃいます。

でも、整腸剤は即効性がある薬ではないこと、腸内環境を整えるのに時間がかかる薬であることを知っておくと、少し安心できるのではないかなと思い、今回お話させていただきました。

週末や長期のお休みなど、病院が開いていないときは、手元にある整腸剤で一時的に様子を見ても大丈夫な場合が多いです。

ただし、『ただの胃腸風邪だと思っていたら、実は別の病気だった』というケースもあります。

以下のような場合は、なるべく早めに病院・クリニックを受診してくださいね。
・ 症状が何日も続く、もしくは悪化している
・ 元気がなく、水分も取れない
・ 便に血が混ざる
・ 嘔吐や発熱がひどい など

お子さんの様子に不安を感じたら、どうぞ遠慮なく受診してくださいね。