ここ数年で発達障害って言葉を耳にする機会が増えたなと感じているお母さん、お父さんたちは多いのではないでしょうか。
私は、当院・しいの木こどもクリニックでお仕事させていただくようになってから、4年目になります。
私が当院で仕事をするようになった最初の1・2年は、1ヶ月に1・2人程の発達に関しての相談があるかどうかくらいの頻度だったように感じます。
それが今では1日に多い日だと4人、1ヶ月で考えると50人前後の発達相談の診察を当院でしています。
開院してから6年以上経過して、来てくださる患者さんが増えたことも理由かなとは思いますが、それにしても数字に表してみると、とても多いように感じます。
私の友達の子どもも保育園から落ちつきのなさを指摘されたことがある子や、姪っこちゃんも1歳半健診だったり病院で指摘されたと聞きました。
お母さんたちはやっぱり最初は受け入れられず、小児科で働いている私はよく、
「どう思う?」
と質問・相談を受けます。
相談された時に私は、先生の言葉をお借りして
「こだわりがあったり、空気を読むことが苦手だったり、動き回ったりなど、そういった発達障害と言われる特性を持った傾向がある子はたくさんいます。その中で、発達障害と言われる子とそうでない子の違いは、その子が過ごしていく中で、周りの人が「○○ちゃんはこういう性格の子だよね」「○○くんってちょっと変わってて面白いよね」と思うか、それとも「○○ちゃんと一緒にやっていくには、ちょっとお手伝いしてもらわないと難しいかな」と感じたり、その子自身が過ごしていく中で大変になるかどうかの違いって言ってましたよ」
とお答えしています。
当院に相談に来るお母さんやお父さんの中でも、園から指摘をされ、発達障害って言われたり、病院に一度相談に行ってみてと言われたが、よくわからない、受け入れられないと思っている方も多いのではないかと思います。
そこで、小児科で働き始めて4年、私が今まで発達の相談を受けた方々と関わって思ったことを書いていきたいと思います。
発達障害とは何?どんな症状のこと?どこに相談すればいいの?
発達障害とは何?どんな症状のこと?
「発達障害ってなに?どんな症状(どういう子のこと)を発達障害っていうの?」
「この年齢の普通の発達の経過と発達障害って何が違うの?」
「この行動がこの年齢で普通なのかどうかよくわからない」
発達相談の方で一番多い質問がここです。
一言で簡単にいうと、私たち医療従事者でもすぐに判断することができないと言うことです。
自分の子が発達障害かもしれないって言われたときに、お母さんお父さんは自分の育て方が良くなかったんじゃないかと、自分を責めてしまった事はありませんか?
でも、それは違います。
発達障害とは、生まれつきの脳の機能が他の人と違っていることで、決して育て方がという問題ではないんです。
なので、そこはお父さん、お母さんたちは自分達を責めてしまうことはやめてくださいね。
発達障害は大きくいうと、自閉症スペクトラム(昔はアスペルガーと言われていました)、注意欠如多動性障害、学習障害の3つに分けられます。
どれも様々な症状があり、同じ自閉症スぺトラムでも全然症状が違ったり真逆だったりすることもあります。
そのため、これだからこの病気と決めつけられないんです。
一部の特性をお話しすると、自閉症スペクトラムは、
■自分と他人との境界がわかりにくい
■こだわりが強い
■好きな事はとことん突き詰めるが、興味がないことは本当に無関心と差が激しい
■空気を読むことが苦手
などがあります。
注意欠如多動性障害はさらにそこから特性がわかれ、不注意タイプと多動・衝動タイプがあります。
小さいころには動きが活発で動き回る、じっとしていられないなどの症状が目立ち、成長するにつれ、動きが活発と言うより、いろんなところに注意が向いてしまって、一つの事を集中してできないなどというのも特性の一つです。
学習障害は、日常生活では問題なく過ごせていても、いざ勉強となるとできない。
しかもすべての教科ではなく、一部の教科だけができない。
文字は読めるのに、書けないなどそういう部分的にできないことも特性の一つです。
ざっくりと3つの発達障害の特性について書きましたが、読んでいて、
「これって普通じゃない?自分にも当てはまるし…」
と思った方も多いのではないでしょうか。
私も正直当てはまるところはいくつもあります。
こだわりなんて言ったら、私は少し職業柄潔癖なところがあり、お風呂に入らないと布団の中には絶対に入らない、鞄を地べたに置きたくないなどあげたらきりがないくらいあります。
ほとんどの人で、こだわりやここは譲れないというポイントってありますよね。
動きが活発なのも、男の子だしとか、歳も小さいし、普通なような気もするし、性格なような気もするし…と思いますよね。
その為
「発達障害って何?うちの子は発達障害なの?」
と聞かれても、すぐに判断ができないんです。
「じゃあどうしたらいいの?」
ってなりますよね。
園から発達の相談をしたほうがって言われたけど、私たちは今まで性格だと思ってたのに、そんなふうに言われてしまって、不安になった、悲しくなった、どうしようと思いますよね。
そんな時、どうしたらよいのか?どこに相談したらいいのか?ということについて次に詳しく話していきます。
相談や検査をするにはどこに行けばいいの?
まず最初に相談するのは、かかりつけの病院です。
他のスタッフのブログでもかかりつけ医をもつことの大切さなどお話ししたと思いますが、こういうところでもかかりつけっていう病院を持っていることはとても大切になるんです。
ちょっと医療従事者の視点からお話しますね。
かかりつけ医を持っていなかった場合、その病院にかかる・相談をするのが初めてになります。
そして、発達障害の可能性があるから病院に行ってくださいと園から言われて相談に来ました。
「この子は発達障害ですか?」
とお母さんから質問をされても、先ほどお話ししたと思いますが、よくわからないんです。
その子の成長の過程の中で、病院で実際にみる時間ってとても短いですよね。
その短い中でその子がどうかなんて決めることは出来ませんし、お母さんたちからしても、
「自分の子どものことを何も知らないのに、なんでこんなこと言われてるの?」
と思ってしまったりすることもあると思います。
でもかかりつけは違います。
今までのその子の成長を一緒に見守っているので、初めましての子どもに比べると断然その子のことを知っているんです。
もちろんかかりつけだからと言って、その場で判断することはできません。
お父さん、お母さんの話をしっかり聞いて、そのうえで先生から、
「こういうときはこう対応してみてください」
などそういったアドバイスを行うのがかかりつけのクリニックです。
よく園の先生から
「専門の所に受診をしたほうがいいと言われたので紹介してもらえませんか?」
という質問も多く受けます。
そんな時、当院の先生はとてもわかりやすく、今後の人生を歩んで行く道を、ドライブ・どこかへお出かけをするときのような例え話をしてくれます。
発達センターなどの専門機関は詳しい地図を作るところです。
療育機関等はどこかへ行くための車などを運転するための技術を学ぶところです。
かかりつけは、どういう方向に進んだらいいかを一緒にみつけてくれる指針をしめしてくれるところです。
実際にそこへ行きたい場所へ向かうために進むために技術を生かすところはご家庭、幼稚園、保育園です。
そしてまた向かっている方向が合っているのか、向きを変えた方がいいのか、それを相談するところがまたかかりつけになってきます。
この役割を考えてみると、すごくわかりやすいなと私は思いました。
「保育園の先生から発達センターに紹介してもらってくださいと言われました」
というお話もよく聞きますが、しいの木こどもクリニックでも1ヶ月で50人前後の患者さんをみています。
更に他のクリニックでも、同じように発達の相談を受けている所も多いです。
そういった方々が皆、発達センターなどの専門機関を受診していたら、そこはパンクしてしまって、本当にそこを必要としている人たちが全然受診できなくなってしまうという問題も出てきてしまいます。
発達相談をしている子が、皆発達障害があるわけではなく、そういった傾向のある子どもたちでも、関わり方次第で、十分普通の生活が送れる子はたくさんいます。
専門機関の受診が必要なのかどうか、そこを見極めるのもかかりつけ医の大切な役割だと思っています。
こういう様々なことを考えると、発達センターや療育機関等に行く前に、まずは身近なかかりつけ医にかかることが大切だとお分かりいただけるかと思います。
園から発達の相談をしたほうがいいと言われ、悲しい気持ちになったお父さん、お母さんも多いと思います。
でも私の友達にも保育園で働いていた子がいてよく話をするのですが、保育士さんたちも、やはり発達に関しての相談をしたほうがいいということを保護者の方に言うのは勇気がいるそうです。
どんな風に伝えたらいいかなと悩むそうです。
でも、その子にとってどうしてあげたらよいかと考えた時に、やはり伝えるべきだと思っていろいろ考えたうえで伝えるそうです。
そういう話を聞くと、私たち医療従事者と園などの教育する場所も思いは一緒だなと実感します。
なので、もし園の先生からそういうことを言われてしまった時は、どうして園の先生が発達相談を受けた方が良いと言ったのか、詳しく聞いてみてください。
園の先生が、どんなことが気になっているのか。
園での様子はどうなのか。
園の先生目線からの意見を聞いたり、お手紙をもらってきてください。
たくさんの情報があったほうが、その子自身の特性だったり、どう対応したらいいか、見えてくる部分もたくさんあります。
そしておうちでお父さん、お母さんたちが困っていることがないかも考えてみてください。
もしそこで相談したいなと思ったら、園から教えてもらった事、またお父さん、お母さんたちが普段困っていること、不安に感じていることを、かかりつけに相談しに来てくださいね。
まとめ
今回、この記事を書くにあたって、少しナイーブな問題のためどうしようか迷ったんですが、先生からのお墨付きというか、勧められたため記事を書くことにしました。
最初は、
「医療の専門的な部分もあるので書けない!」
と思ってたんですが、じっくり考えてみると、ずっと先生の話を側で聞き続け、自分が発達相談の問診を聞き続けてきた中で、
「皆、心配なこと・思っていることはほとんど同じ」
ということが分かり、自分が学んだことや感じたこと、思ったことを是非書きたいと思って書くことにしました。
また私は、仲のいい友達が保育園で働いているので、“園(保育士)の思い”と“病院(医師)の思い”、両方を聞くことができるので、
「患者さんは園に言われてきたのに、なんで園は何の情報も持ってないの?」
という医師の思いや
「なんで病院はその情報を欲しいって言うの?」
という保育士の思い。
どちらも、子ども・子育てに関しての熱い思いや考えは同じです。
両方の思い・考えを知ることが出来るので、そこを両者に伝えたいということもあり、書くことにしました。
発達相談は、本人・両親ともに少しナイーブな問題で複雑です。
そのため、今日の今日、普通に予約を取っていただいてもお応えすることは困難です。
当院・しいの木こどもクリニックでは、発達相談は完全予約制にしております。
というのは、お母さんたちの話をしっかり聞いた上で、先生がどう対応するのが一番いいかについて考え、そのことについてじっくりとお話をしたいからです。
当院で発達相談をされたい方は、電話 0564-25-1112 まで、お気軽にお問い合わせください。