食物アレルギーのあるお子さんをもつお母さんお父さん。
毎日の食事の準備の中で、原因の食べ物を除去したりするのって、メニューも限られたりするのでなかなか大変ですよね。
検査後、1年位して『そろそろ食べられるようにならないかなぁ』と思って病院を受診して相談すると、場合によっては採血などでアレルギーの数字を確認して、
「これなら少しずつなら食べていっても大丈夫だよ」
と、医師から言われる場合もあります。
でも、
「少しずつってどれくらいなら大丈夫なの?」
「蕁麻疹などのアレルギー症状が出た時、パニックになりそうで心配…」
など、自宅で食べさせることについて、不安なこともありますよね。
そういう時は、『病院の外来や日帰り入院など、医師の指導の元で食べてみる』という検査があります。
それが、『経口負荷試験』という検査になります。
※医師が必要と判断した場合に行うもののため、医師とよく相談してください。
今回は、それがどういう検査で、どういう事をやるのかということについて、以前、小児科の病棟で働いていた私の経験を踏まえてお話していきます。
経口負荷試験で食べられるものが増えるかも!?
食物アレルギーの経口負荷試験とは、『病院やクリニックでアレルギーを起こす(起こすかもしれない)食べ物を、医師の管理の元で食べてみる』という検査になります。
この検査の目的は、
①本当にこの食べ物が原因のアレルギーなのかを確かめる
②食物アレルギーがあると分かっている場合、どれくらい食べると症状が出てしまうのか(どれくらいなら食べても症状が出ないのか)を確かめる
というのが主な目的です。
以前は、アレルギーの原因の食べ物は全く食べない(完全に除去する)という考え方が多かったのですが、最近では、食べても大丈夫な量は食べていく(除去は最小限にする)、という考え方が多くなってきているため、それを目的として行うことが多いようです。
経口負荷試験のやり方としては、簡単に言うと、
『少し食べて様子を見る→大丈夫ならもう少し多く食べて様子を見る→大丈夫なら更にもう少し多く食べて様子を見る…』
という繰り返しです。
例えば、卵黄アレルギーのあるお子さんには、
『かたゆで卵の黄身を1/8個食べさせ、30分ほど経過観察をして、アレルギーが出なければ、今度は3/8個を食べさせ、また30分ほど経過観察をして、それでも症状が出なければ、今度は1/2個を食べさせて…』
ということを、2~3回に分けて食べさせてみて、どれくらい食べても大丈夫なのかを確認していました。
そして、途中で症状が出た場合、検査は中止となります。
症状が出た場合でも、病院やクリニックで検査を行っているため、医師や看護師は近くにいますし、また、内服薬や点滴などですぐに対応ができます。
検査終了後、症状などを踏まえて、
「本当にアレルギーが原因なのか」
「どれくらいなら食べても大丈夫なのか」
ということについて医師から話をしてもらい、検査(経口負荷試験)は終了となります。
以前、私が小児科の病棟で働いていた時には、夏休みなどの長期休みには、食物負荷試験の日帰り入院が増える印象でした。
食物アレルギーを持っている子どもって意外と多いです。
また、子どもにとっては、『今まで食べていない物を食べる』ということなので、食べるのを嫌がる子どもも時々いました。
そんな子どもには、塩を多めにかけて、なんとか味をごまかして食べさせていた、なんていうこともしていました。
他には、卵黄を1/8個、3/8個はなんとか食べられたんですが、最後の1/2個がどうしても嫌で、廊下まで聞こえるくらいの大声で
「嫌だあぁぁぁあああぁーーー!!」
と叫ぶ子どももいました。
食べさせるのは保護者の方に行っていただくので、看護師は横でお子さんをなだめたり褒めたりと、なんとか食べてもらおうと必死だった思い出があります。
食べさせた後は、基本的にはベット上安静(運動することで症状が出やすくなってしまうのを防ぐため)なのですが、これまた遊びたくて嫌がる子どももいて大変でした。
実習の看護学生さんが、その様子を見て、ベット上で過ごせるような遊びを考えてくれたのですが、子どもはよっぽど楽しかったのか大はしゃぎ!
そのため、看護師長さんに
「安静に!!!!!!」
と、怒られてしまったこともありました…。
子ども(患者さん)と看護学生さんにうまく声掛けできなかった、自分の未熟さを反省した、私の苦い苦い思い出です…。
また、アレルギーの原因を突き止めるために、日帰りではなく、長期間の入院をした子どももいました。
その子は、アレルギーが出ると思われる食べ物が本当にたくさんあって、普段の食事に大変苦労していたみたいです。
その子は中学生だったのですが、
「友達と遊びに行ってもほとんど何も食べられなくてそれが嫌だった」
と言っていました。
通常は2~3回に分けて食べるのですが、その子はもっと回数をかけて食べられるのかを確認。
大丈夫なら今度は別の食べ物で試して…と、何ヶ月もかけて検査をしました。
幸いなことに、検査の結果で食べても大丈夫なものがいくつも増えて、退院の時には
「これで友達と買い食いができる!クレープが食べたい!」
と、笑顔になっていたのが印象的でした。
小さい頃に食物アレルギーで食べられなかったものでも、年齢によっては食べられるようになることもあります。
ただ、だからと言って、『自分の判断で食べてみる』というのはやめてください。
たまに耳にする『アレルギーは食べていれば治る』というのは誤解です。
食物アレルギーは、最終的には『食べられるようになること』を目的として勧めていくことが多いです。
近年では、『食べても大丈夫な量を継続して食べていく』という治療を行っている病院もありますが、あくまで医師の管理・指示の元、行っていく治療になります。
アレルギーのある食べ物を食べさせていきたい場合は、自己判断せず、病院を受診し、医師に相談してください。
まとめ
食物アレルギーのあるお子さんをもつ親御さんは、症状が出た時のことを思うと、なかなか食べさせることに不安を持つ方も多いと思います。
「そろそろ食べさせたいけど不安で…」
という方は、今回お話した経口負荷試験という方法もありますので、病院を受診し、医師に相談してみてください。
また、『経口負荷試験までは…』という方でも、不安な事、心配なこと、聞いておきたいことは、病院・クリニックを受診し、相談してください。
不安なこと、心配事が一つ減るだけで、だいぶ気持ちも楽になりますよ(^^)
※ただ、当院・しいの木こどもクリニックでは、相談はお受けできますが、外来での検査を行っていないため、大きな病院を紹介し、そちらへ受診してもらうことになりますのでご了承下さい。