突然ですが皆さん、『ステロイド』というお薬をご存じでしょうか?
小児科ではよく、『湿疹の軟膏(塗り薬)』として使われることが多いお薬です。
今の季節(夏頃や残暑頃)だと、あせもの薬としても使われることが多いですね。
他にも、内服(飲み薬)を、喘息発作のひどい時などに使うこともあります。
さて、そんなよく使われるステロイドの薬ですが、主におじいちゃん・おばあちゃん世代から
「ステロイドは副作用があって良くないって聞いたんだけど…」
と、本当に時々ですが聞かれることがあります。
そこで今回は、よく使われるけどあまりよく知られていない『ステロイド』の薬はどんなものなのか。
その効果と、気になる副作用についてお話していきます。
ステロイドの薬ってどんな物?正しく使えば副作用は怖くない!
ステロイドの薬ってどんな物?
ステロイドとは、正式には、『副腎皮質ステロイド』といって、体内で作られるホルモンの一種です。
そのホルモンの作用を、薬に応用したものがステロイドの薬になります。
効果は、炎症を抑える作用(抗炎症作用)、血管を収縮させて、赤みを抑える作用(血管収縮作用)、抗体が作られるのを抑える作用(免疫抑制作用)などがあります。
外用薬(塗り薬)だけでなく、内服薬(飲み薬)や注射薬などもあり、さまざまな病気の治療に使われています。
小児科では、外用薬(塗り薬)をよく使います。
ステロイドの塗り薬の炎症を抑える作用は優れていて、湿疹や皮膚炎などの治療に多く使われます。
このステロイドの塗り薬には、いくつか強さの段階(1~5までの5段階)があり、症状や使う部位によって使い分けていく必要があります。
例えば、顔や首、陰部(お尻など)は、薬がよく効く部位なので、弱めの薬でも十分効果があります。
逆に、手足は効きにくい部分なので、少し強めの薬を使うこともあります。
また、塗り薬以外でも、喘息発作の時などには、気管支などの炎症を抑えるため、内服薬(飲み薬)や吸入薬を使うこともあります。
あとは、注射薬もあるのですが、小児科の場合は、クリニックなどの外来ではなく、病院に入院して治療する時に使うことがほとんどですので、あまり目にする機会はないかと思います。
と、このように、ステロイドの薬は、いろんな病気の治療に使われる薬なんです。
ステロイドの副作用は正しく使えば全然怖くない!
ステロイドに限らずですが、副作用がまったくない薬というのはありません。
ほとんどの薬には、多かれ少なかれ、副作用というものがあります。
ですが、ステロイドの薬に関しては、『ステロイド=こわい薬』という、なかなかインパクトのある噂が広まったことがありました。
今から30~40年ほど前、ステロイドの薬が使われ始めた頃のお話です。
先ほどお話したように、ステロイドの薬には色々な効果があり、『よく効く薬』として、大量に・長期間にわたって使用することが多かったんです。
まだ使われ始めた頃なので、短期間使用した時の副作用に関する研究はしていても、大量に・長期間使用するとどうなるのかという研究は、まだそこまで進んでいなかったのかもしれません。
そのうちに、ステイロイド薬を使用したことによる副作用がいろいろと分かってきました。
主な副作用としては、次のようなものがあります。
軟膏(塗り薬)の副作用:
局所性副作用(塗った部分に現れる可能性のある副作用)
・皮膚の萎縮
・毛細血管の拡張(特に顔面に起こりやすい)
・肌の乾燥
などです。
内服(飲み薬)の副作用
・易感染性(免疫力が低下して感染症にかかりやすくなる)
・骨密度の低下
・満月様顔貌(ムーンフェイス)
・中心性肥満
・動脈硬化
・高血圧
などです。
・・・
色々と副作用についてお話しましたが、これらは、大量に・長期間(何ヶ月も)使うことで起こるものがほとんどです。
また、一般の小児科のクリニック(外来)では、長期間の内服などを行うことはほぼありません。
入院が必要な病気で、入院している時に使うことがほとんどです。
中には、退院後もステロイドを飲まなくてはいけない病気もありますが、そういった場合は、きちんと定期的な外来受診でフォローされています。
さらに、ステロイドの薬が使われだして、もう30~40年が経っています。
医学は日々進歩しており、副作用に対する研究もしっかりと行われています。
副作用が出ない使い方を決めたり、長期間の使用が必要な場合には、副作用に対しての治療も併せて行われたりしています。
とここで、小児科でよく使われる軟膏(塗り薬)の使い方についてお話しますね。
軟膏にも、先ほどお伝えしたような副作用はありますが、くどいようですが、長期間使用することで副作用が起こります。
逆に言えば、短期間の使用で済ませられれば、副作用が起こるリスクはほとんどありません。
そのため、軟膏(塗り薬)の使用は、『短期集中』がポイントです。
軟膏を数日間しっかり塗って、湿疹をきれいに治してしまう。
治ったら、ステロイドの軟膏を塗るのをやめる。
ステロイドの軟膏は、使うのをやめて、4~5日経つと、副作用の出るリスクがリセットされます。
そのため、『治ったら、ステロイドの軟膏を塗るのをやめる』ようにすると、使わなくてもいい期間を延ばすことが出来ますので、『短期集中』が大切なんです。
ここでのポイントは、『皮膚の赤みやぶつぶつがなくなっても、触ってザラザラが残るような場合は、もうしばらくステロイドを使うこと』です。
良くない使い方としては、例えば、
『少し良くなったからといってステロイドの使用をすぐにやめ、2日空けたらまたひどくなったからといってステロイドを使用する』
という風に使っていると、間があまり空かず、リセットされないため、長期間の使用と同じことになってしまい、逆に副作用の出るリスクが増してしまいます。
そうならないために、
『ザラザラがなくなるまできちんとステロイドの薬を使って、調子のいいお肌を保湿剤などでキープする』
という使い方が良いということが言われています。
ステロイドの薬は、きちんと医師の指示通りに正しく使うことが大切になります。
また、ステロイドの薬に限らずですが、薬に対して心配や不安があると、お子さんへ使うことに抵抗がありますよね。
そういう時は、遠慮なく先生(医師)に聞いて下さい。
そして、その質問に対し、ちゃんと答えてくれる先生のいる病院・クリニックで診てもらうこと。
そうすることで、私達親も安心でき、また、お子さんのためになります。
まとめ
今回は、ステロイドの薬について、いろいろとお話させていただきました。
正直言うと、副作用については、あまり言う(書く)と、お母さんたちを不安にさせてしまうのではないかと思ったのですが、あえて正直に書かせていただきました。
というのは、やはり、ステロイドの薬について、正しく知っていただき、正しく使ってもらいたいと思ったからです。
本当にくどいようで申し訳ないのですが、今回お話したステロイド薬の副作用は、大量に・長期間使用した場合のものなので、短期間の使用でみられることはほとんどありませんので安心して下さい。
もし心配なようであれば、なんでも先生に質問してくださいね。