皆さんは、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種についてご存知でしょうか。
2016年に、不活化ポリオワクチン(イモバックスポリオ)の、2回目追加接種の認可がおり、まだ定期接種とはなっていませんが、任意(自費)での接種が始まりました。
先日(2017年6月)、当院・しいの木こどもクリニックの定期勉強会において、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種について、その必要性や、皆さんが心配される副反応などについて学ばさせていただきました。
そこで今回は、その定期勉強会で学んだことをもとに、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は必要なのかどうか。
また、皆さんが心配される副反応などについてお話していきます。
不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は必要?任意接種だけど副反応は大丈夫?
不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は必要?
不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は、2019年8月現在、定期接種ではなく、任意接種です。
その為、『定期接種じゃないならわざわざ打たなくてもいいよね』と思われている方が結構いらっしゃいます。
必要・不要という前に、ポリオについて少しお話していきますね。
■ポリオの感染経路
ポリオは、ポリオウイルス感染者が排泄した便から、ウイルスが手などを介し感染する、経口感染が主な感染経路です。
しかし、ポリオウイルスに感染して間もない頃は、咳やくしゃみなどによる、飛沫感染でも感染することが報告されています。
ポリオの感染経路は、経口感染だけと思われがちなので、ポリオウイルスに感染して間もない頃は、飛沫感染もあるということを覚えておいてくださいね。
■ポリオの症状
ポリオウイルスに感染した場合、すべての人が症状を発症するのではなく、90%以上の人が無症状(不顕性感染)や、軽い風邪の症状、又は、胃腸症状のみで回復します。
しかし、重症な場合、手足の麻痺を引き起こし、一度発症すると回復しない場合や、後遺症にも繋がります。
また、抗体を持たなければ、子どもだけでなく、大人も感染します。
『90%以上が無症状とか軽い症状なら大丈夫だよね』
と思うのか、
『10%未満だけど、ポリオウイルスに感染して重症になると大変!』
と思うのか。
『万が一、重症になってしまったらこういう症状になる』ということをしっかりと理解した上で、打つ・打たないを判断することが大切です。
■ポリオの感染リスク
ポリオの感染経路や症状を見たところで、
『実際、国内にポリオウイルス感染者ってどれぐらいいるの?』
って気になりますよね。
実は、2019年8月末現在、国内ではポリオ患者は報告されていません。
ちょっと安心したと同時に、『国内にポリオウイルス感染者がいないなら、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種って必要ないじゃん』って思いませんでした?
しかし、海外ではまだポリオが流行している国が多々あります。
アフガニスタン・パキスタン・ナイジェリアなどでは、”野生株ポリオウイルス”が。
パキスタン・ナイジェリアギニア・ラオス・マダガスカル・ミャンマー・ウクライナなどでは、”ワクチン由来株ポリオウイルス”が流行しています。
2015年、これらの国から日本への入国者数はなんと53,872人。
不活化ポリオワクチン 就学前追加接種 保護者啓発リーフレット
2020年には東京オリンピックが開催されるということもあり、今後、日本に入国する外国人はますます増加すると予想されます。
又、日本人が海外留学する人数も年々増加し、ポリオウイルスが国内に持ち込まれるリスクは、今後、更に高まると考えられます。
昔は、『海外に行かないから、◯◯の予防接種は打たなくて大丈夫』で良かったかもしれませんが、今はそういう時代ではなくなりました。
自分達でしっかり予防・管理することが何よりも大切です。
と、ここで本題の『不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は必要なのかどうか』について、定期勉強会であった話をお伝えしていきます。
現在、不活化ポリオワクチンは、初回3回+追加1回の接種で、接種後は高い抗体ができるのですが、時間が経つにつれ、抗体が低下するということが報告されています。
言い換えますと、『時間が経つとポリオの感染を防ぐ力が低下し、感染のリスクが高くなる』ということです。
『低下した抗体を再び上昇させるためにも、4~6歳の時に、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種をすることは必要』
ということでした。
ちなみに、欧米や諸外国の多くでは、4歳以降に追加接種が実施されているそうです。
定期接種だったらほとんどの方が打つと思います。
しかし、不活化ポリオワクチンの2回目追加接種は、任意・自費での接種。
任意・自費の接種になると、正直、予防接種をためらってしまう方が多くいるというのが現状です。
予防接種を打つ・打たないは、家族皆でしっかりと考えてくださいね。
不活化ポリオワクチンって副反応は大丈夫なの?
不活化ポリオワクチンだけに限らず、予防接種で何より気になるのが『副反応は大丈夫なのか』というところではないでしょうか。
患者様など、一般的には『副作用』と言われる方が多いようですが、正しくは『副反応』と言います。
その、不活化ポリオワクチンの副反応なんですが、副反応はないとは言えませんが、他のワクチンと同等のレベルと言えます。
この、”他のワクチンと同等のレベル”をどう捉えるか。
不活化ポリオワクチンを接種される場合は、『不活化ポリオワクチン接種をご希望の方へ(任意接種)』と、『不活化ポリオワクチン接種申込書・予診票(任意接種用)』をよく読んで、納得した上で接種されることをおすすめします。
まとめ
当院・しいの木こどもクリニックでは、今回お話したような予防接種や、診療に関わる知識を深めるため、定期的に様々な勉強会を行っています。
日々の診療・予防接種だけでは、ついつい目の前のことだけにとらわれがちですが、定期的に勉強会を行うことで、世の中の動向を知ることが出来、また、私たち医療従事者の役割について考えさせられます。
2017年7月1日の新聞に、
『はしか急増!半年で163人!』
という記事がありました。
海外で感染し、それが国内で広がり、すでに昨年の患者数より上回っているとのことでした。
ご存じの方も多いと思いますが、はしかのワクチンは、20代後半~30代の人は、過去に1度しかワクチンを打っていない人が多く、十分な免疫を持っていない可能性があります。
先程も記述しましたが、『海外に行かないから、◯◯の予防接種は打たなくて大丈夫』ではなく、自分達でどうすべきかしっかりと考え判断し、予防・管理することが大切です。
かつて、日本は海外より予防接種が遅れており、”海外とのワクチンギャップ”がかなりありました。
しかし、今では任意接種だった多くのワクチンが定期接種へと変わってきています。
個人的な意見ですが、
『この年代は抗体を持っている』
『この年代は感染のリスクが高い』
という、”国内におけるワクチンギャップ”もまだまだ多いように感じています。
任意接種はあくまでも”任意”です。
任意の予防接種は自費ということもあり、保護者の方々の考え方は様々だと思います。
私たち医療従事者は、正確な情報を提供することも大切な役割ではないかと思っています。
打つ・打たないを迷ってらっしゃる方もいると思いますが、今回お伝えした内容をじっくりと見ていただき、家族皆でしっかりと考えてくださいね。