皆さん、チック(チック症)ってご存知でしょうか?
芸能人の中にもチック症の方がいたりするので、知っている方は知っているかもしれませんね。
さて、そんなチックですが、実はこれ、子どもにも起こる症状なんです。
もう20年以上前になりますが、私の妹も、今思うと『あれはチックだったかも?』という症状があったので、実は結構身近なものなのかもしれません。
そこで今回は、チック(チック症)とはどんなものなのか?
治療法や対処法はあるのか?など、チック(チック症)についてお話していきます。
チックってどんな症状?原因は?
チック(チック症)とは、本人の意思に関係なく、体が動いてしまったり、声を出してしまったりすることを、繰り返ししてしまう疾患のことを言います。
もう少し詳しく説明すると、発声や言語の特徴による『音声チック』と、顔や手足が動く『運動チック』に分けられます。
音声チックの症状としては、咳払いがもっとも多くみられます。
他には、「あっ」「うっ」といった単純な音声(言葉)や、特定の言葉を繰り返す複雑な発声などがあります。
運動チックとは、一見癖に見える、まばたきや肩すくめなど、身体の動きのことを言います。
さらに、その動作の持続時間によって、『単純性チック』と『複雑性チック』に分類されます。
チックの原因は、昔は本人の癖や性格、親の育て方に要因があると思われていました。
今もはっきりとした原因は分かっていませんが、最近の研究では、脳の働きを調整する、神経伝達物質の一種である、ドーパミンの働きが偏ることによってチックが起こるということが分かってきました。
つまり、本人の癖や親のせいではないということです。
本人の特性である部分が大きいため『私が厳しくしつけたせいかしら…』なんて不安に思わなくても大丈夫ですよ。
ただ、ストレスや不安を感じた後にチック症状が出たり、悪化・持続する場合もあったりするため、環境的な要因がまったく関係ないというわけでもありません。
また、なんらかのチックの症状が一時的に現れることは、子どもの10人に1人~2人にあるため、そこまで珍しい症状でもないと思います。
さらに、ほとんどの場合はそのまま軽快することが多いです。
冒頭に少し触れましたが、私の妹も、今思うと『チックだったのかな?』というような症状が昔はありました。
目をギュッとつぶるような症状と、首を動かすような症状の両方が出ていたように思います。
まぁ、もう20年以上前の話なので、今みたいにネットで検索できる時代でもなく、親もチックについての知識もないので、
「髪の毛が目に入っているせいじゃないの?」
と、こまめに前髪を切ったりしていました。
その症状も気づくとなくなっていたので、うちの妹もそのまま軽快したパターンだったんだと思います。
また、受診される患者さんからも
「うちの子のこの仕草ってチックなんでしょうか?」
という質問が時々あります。
私が見聞きした感じだと、瞬きや首振りの症状が多いように思います。
このように、チック症は案外身近なもので、ほとんどの場合は自然に軽快していきます。
ただ、チック症状が長く強く1年以上続いて、日常生活に支障をきたすような場合は、『トゥレット症候群』という別のものになるため、症状の程度や期間、本人の困り具合などは見ておいてくださいね。
チックに治療法・対処法はあるの?
チックについて、日常生活で困るようなことがなければ特に治療は必要とされていません。
ただ、自分を叩いてしまうなどの自傷行為があったり、頻度が多くて日常生活に支障をきたしたりするような場合は治療することもあります。(当院では今のところ、そこまでのお子さんはいません)
困るような場合は、一度病院を受診して相談してみて下さい。
また、チックではない場合でも、チック以外の病気の可能性もあります。
確認する意味でも、気になった時は早めに一度病院を受診することをおすすめします。
また、治療はしなくても、周りの対処が重要になってきます。
まず、叱ったり、注意したりしないこと。
チックの症状は、自分の意思で止めることは難しいものなので、周りが無理やり抑えつけたり、叱ったりしてよくなるものでもありません。
次に、緊張や不安を和らげてあげること。
本人の緊張や不安が軽減されることで症状が軽くなる場合もあります。
本人が休んだりできるようにしてあげてください。
また、子どもに寄り添った声掛けをしてあげることも大切です。
本人が症状をどう思っているのかを確認し、本人の困り具合などを見てあげて下さい。
年齢が上がってくると、自分でもチックについて気になってしまい、そのことでよりストレスを感じてしまう場合もあります。
お子さんの気持ちに寄り添い、不安を和らげるような声掛けをしてあげて下さい。
また、周囲に理解を求めることも必要です。
家族が理解していても、園や学校では本人の癖だと思われて、注意されてしまうこともあるかもしれません。
園や学校などに伝えて、一緒に見守ってもらえるように環境を整えてあげてください。
それでも困ることがあるなら、医療機関に相談してください。
必要に応じて、専門の病院に紹介したりすることもできます。
ちなみに、先程から出てくる私の妹の件ですが、親の対応としてはあまりよくなかったかも…と記憶しています。
癖だと思っていたのか、なんとかやめさせようとして
「みっともないからやめなさい!」
と、症状が出るたびに何回も注意していたように覚えています。
あとは、前髪をめちゃくちゃ短く切ったりして、逆にストレスだったんじゃないかなと…。
まぁ、うちの親も少し神経質なところがあったので、そのせいもあるかもしれません…(;^ω^)
繰り返しになりますが、チックの症状は、叱ったり注意したりしても、本人の意志で止められるものではありません。
むしろ、叱ったり注意したりすることが、本人の不安やストレスの原因になってしまう場合もあります。
まずは様子を見る、見守ることが大切だと思います。
まとめ
最近、患者さんからチックについての質問があり、その時にふと妹のことを思い出したということもあり、今回はチックについてお話させていただきました。
また、『うちの子のこの仕草はチックなのかな?』と思っている親御さんに、うちの親のような間違った対応はしてほしくないという思いもありました。
思い返すと、昔はチックの知識もないので、うちの親(特に父親)はチックに対して適切な対応ができていなかったと思います。
幸いなことに、妹は自然にチックの症状がなくなりましたが、本人には結構ストレスだったんじゃないかなと今になって思います。(妹本人が覚えているかは分かりませんが)
お子さんに個性があるように、チックの症状や、それに対してどう感じるかもお子さんによって様々です。
ご自宅での対応が難しくなったり、症状が強くなった・長引いたりしているという場合は、一度病院を受診し、相談していただけたらと思います。