今は、昔と比べて、核家族や共働きをしているご家庭が増えてきました。
そのため、子どもの急な発熱(風邪)などの時、『今日はどうしても仕事が休めないけどどうしよう…』と、頭を抱えるご家庭も多いのではないでしょうか。
そんな時、『お母さんが一緒に行けないから、代わりにお父さんが』。
『両親ともに仕事が休めないから、代わりに祖父母が』。
と、当院・しいの木こどもクリニックにも、『子どもとお母さん』『子どもとお父さん』『子どもとおじいちゃん』『子どもとおばあちゃん』など、様々なペア(組み合わせ)で受診されます。
子どもを育てる上で、いろんな方に協力してもらうのはとても大切なことです。
しかし、普段よく子どもを見ている、看病している、子どもの病歴を詳しく知っているお母さん(各ご家庭による)以外、お父さんやおじいちゃんおばあちゃんが子どもを病院へ連れて行く場合には、特に気をつけたいことがあります。
それは、『問診時に子どもの症状を説明できるかどうか』ということです。
実はこの問診なんですが、病院・クリニックでは非常に大きな役割を持っているんです。
ということで今回は、問診の役割・重要性について。
そして、お父さんや親以外の祖父母が、子どもを病院へ連れて行く場合に、お母さんから聞いてくる・聞いてきてほしい内容についてお話していきます。
親以外(祖父母)が子どもを病院へ連れて行く時に気をつけたいこと
問診の役割と重要性
当院・しいの木こどもクリニックでは、問診をとても大切にしています。
そのため、診察の進行状況などによりますが、できる限り看護師が、事前に各個室の待合室へ、問診を詳しく聞きにいくという方法をとっています。
私は未婚のため、小児科に受診する機会はありませんが、自分が他の医療機関へ受診した際に、ここまで問診を詳しく書いたことも、先生に伝えたこともありません。
そのため私は、『うち(しいの木こどもクリニック)は少し特殊なのかな?』と思ったこともあり、同じように思われる親御さんも多いかもしれません。
しかしこの問診、実はとっても大切なんです。
当院・しいの木こどもクリニックの院長は、時々、診察にみえた親御さんに
「聴診器などで診察したら、何の情報がなくてもどんな病気かがわかると思われている方もいますが、実はお父さんお母さんから聞く問診から7・8割診察しています。
その中で、「こんな状態になっているのかな?」「こういう病気が考えられるかな?」と、何パターンか頭の中で考えをまとめているんです。
実際に聴診器で、胸の音、お腹の音を聞いたり、喉を診察したりして、自分の中で考えた状態、病気の答え合わせをしています。だから、家での情報、問診がとても大切なんです。」
とおっしゃっています。
知っていましたか?
先生方は問診で情報を得て8割近くを診察しているんです!
ちょっと驚きですよね。
しかし、裏を返せば、それだけ問診がとても大切ということなんです。
先ほど伝えた通り、今は核家族、共働きをしているご家庭も多く、発熱などでお子さんが急に保育園や幼稚園、学校を休まなきゃいけなくなってしまったという時はとても困りますよね。
今は、各ご家庭によって様々なライフスタイルがあるため一概には言えませんが、お母さんがお子さんの様子を一番知っているというご家庭が、まだまだ多いのではないでしょうか。
また、お母さんがお勤めされているという方も多く、お母さんが仕事を休めない時は、お父さんがお子さんをクリニックに連れてきてくれたり、ご両親ともに休めない時は、おじいちゃんおばあちゃんがお子さんをクリニックに連れてきてくれることがあります。
お母さんだけではなく、家族・一家皆で子育てするというその姿勢、とても素晴らしく思います。
しかし、いざ問診を聞こうとしたとき、お子さんの情報が全然なかったり、病気の症状を知らなかったりと、必要な情報が聞けない時があります。
ご家族の方としては、
『子どもがしんどそう!早く元気にしてあげたい』
という思いから、
『小児科を受診すればどんな病気かわかるだろう。何か薬を出してくれるだろう』
と考え、とりあえずお子さんをクリニックに連れてこられているのだと思います。
病気の種類によっては、診察しただけである程度わかる場合もあります。
しかし、先ほどお伝えした通り、基本的には問診が鍵となって診察をします。
そのため、必要な情報が聞けない場合は、判断が難しかったり、そのお子さんに必要なお薬を出してあげられなかったりしてしまいます。
そうなると、せっかくクリニックを受診したにも関わらず、お子さんの病気が治らないため、お母さんが時間を作って、再度クリニックを受診しなければいけないということになってしまいます。
お家の方同様、私たちクリニックの医師・スタッフも、1日でも早くお子さんを楽にしてあげたい、元気にしてあげたい、治してあげたいという思いは同じです。
クリニック側としては、病気のお子さんを、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、どなたが連れてきてくださっても大丈夫です。
しかし、問診の役割・重要性を考えた時、お子さんの状態・経過がわかるようにしてきてほしいというのが、当院・しいの木こどもクリニックからのお願いです。
お母さんから聞いてくる・聞いてきてほしい内容
『子どもの状態・経過がわかるようにしてきてほしいと言われても、何をどこまで聞いてくればいいの?』と、思わず悩んでしまいますよね。
そこで、お子さんの症状別に、聞いてきてほしいポイントをいくつかご紹介したいと思います。
【熱がある場合】
■今、熱がでているか?
■いつから熱がでているか?
■解熱剤(熱を下げる頓服)は使ったか?
■解熱剤を使った場合、いつ使ったか?
■解熱剤は飲みタイプ?それともお尻から入れる座薬タイプ?
一般的に子どもの発熱は37.5℃以上と考えてください。
平熱が低い子は、”普段より1℃以上高ければ発熱しているかも”とみてください。
また、これはよくある話なんですが、”朝、熱が下がっていたからもう熱はない”と考える方が多くいらっしゃいます。
しかし、1日の中で熱があがったりさがったりする風邪は多いため、朝、熱が下がっていたからといって治ったとは言えません。
基本的に、24時間通して発熱がなければ熱が下がったと考えられます。
そのため、熱は最低1日3回、朝昼夜と測ってもらえると助かります。
しかし、測ったはいいものの、測ったことで満足してしまい、記録をつけ忘れてしまう方もみえます。
私も数字に弱いため、自分では覚えていられると思っていても、すぐに忘れてしまいます(^^;
当院・しいの木こどもクリニックのホームページから、体温表を印刷できますので、よかったら活用してください。
また、それ以外でも、メモ帳などのアプリを使って記録しているお母さんもいましたよ。
受診する際、その記録を持ってきてくださると、医師がより判断しやすくなるので、出来る限り体温(管理)表をつけていただければと思います。
【咳をしている場合】
■今、咳はでているか?
■いつから咳がでているか?
■痰(たん)がからんだような咳?それとも乾いたような咳?
■咳が多い時は、咳が多い時間帯は?
■夜、咳で起きたりしていないか?
■咳込みがひどく、そのまま嘔吐したりしていないか?
【鼻水が出ている場合】
■今、鼻水はでているか?
■いつから鼻水がでているか?
■鼻水の色はどんな色か?
■鼻づまりは大丈夫か?
【喉が痛い場合】
■今、喉の痛みはあるか?
■いつから喉の痛みがあるか?
(小さいお子さんの場合は、自分で喉が痛いとは言えないので、その場合は大丈夫です)
【下痢の場合】
■今、下痢をしているか?
■いつから下痢をしているか?
■1日何回くらい下痢をしているか?
■1回の量は多い?少ない?
■便の硬さは柔らかめ?ドロドロ?水っぽい?
■便の中に血は混ざっていない?
■お尻はかぶれていない?
子どもがまだオムツの場合、なかなか判断が難しいと思いますので、その場合は、そのオムツを持ってきてもらったり、写真を撮ってきてもらうとわかりやすいです。
特に、もし便の中に血が混ざっている時は、便によってはその便から検査に出すこともありますので、オムツごと持ってきて診察時に見せてください。
【発疹がある場合】
■今、発疹はあるか?
■いつから出てきたか?
■どこらへんに出ているか?
■かゆみはあるか?
発疹によっては、その時出ていても、受診時には消えてしまう発疹もあります。
そのため、発疹の写真を撮ってきてもらうと助かります。
また、蕁麻疹(じんましん)から発疹が出た場合は、出る原因になるようなエピソードがあるかどうか、疑わしいものがあるかどうかも聞いてもらえると助かります。
ただ、原因不明で出ることも多いため、これといって疑わしいエピソードがなければ、「ありません」と言っていただければ大丈夫です。
また、発疹によっては、水ぼうそうのように空気感染でうつってしまう発疹もあるので、気になる発疹が出ているときは、必ず受付時に声をかけてください。
お母さんから聞いてくる・聞いてきてほしい内容を、お子さんの症状別にポイントをいくつかご紹介させていただきました。
内容的にはそれほど難しい内容ではないと思います。
1日でも早くお子さんを元気にするため、また、二度手間にならないためにも、お子さんの状態・経過をわかるようにしてきていただければと思います。
まとめ
お母さんの代わりに子どもをクリニックへ連れてこられるお父さん、おじいちゃん、おばあちゃん。
普段、小児科へは、あまりというかほとんど行く機会がないため、何を持っていけばいいのか、どうすればいいのか等、正直わからないことだらけで不安でいっぱいだと思います。
しかし、そんな不安があっても、”お子さんを早く治してあげたいというその気持ちだけで連れてきている”と、実際私は肌で感じています。
だからこそ、私達はしっかりとした診断・診察をしたいんです!
それには、お子さんの状態・経過などの情報は、問診時にはとても大切になってきます。
『本当は自分で連れてこれたらいいんだけど、どうしても連れてこれないからお願いした』というお母さん方も多くいると思います。
時には、事細かいメモを書いて、旦那さんに持たせているという方もみえます。
そんな時、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん、皆さんお子さんを早く治してあげたい、楽にさせてあげたいというお子さんへの強い愛情・思いを凄く感じます。
かわいいお子さんの病気を早く治すためにも、出来る限り協力していただければと思います。
そして、その皆さんの思いに私達も応えていきます。