最近、テレビやSNSなどで、百日咳の流行を耳にすることが増えましたね。
少し前に流行したマイコプラズマ肺炎もそうですが、以前はあまり聞かなかった病気が流行することが最近よくあるように感じます。
コロナ禍を経て、世間の病気への関心が高まったからかと思いますが、実際のところどうなのでしょうか?
百日咳もその一つで、以前はあまり知られていなかった病気かもしれません。
そこで今回は、百日咳とはどんな病気なのか。
また、その予防方法についてもお話ししていきます。
百日咳ってどんな病気?
百日咳とは、その名の通り、咳が主な症状となる病気で、長いと百日程度続いてしまうことが特徴です。
さらに、大人と子どもでは症状が異なる点も大きな特徴です。
大人の場合、発症しても症状が軽く済むことがあり、普通の風邪と見分けるのが難しいと言われています。
対して、子どもの場合は、最初は風邪のような咳や鼻水といった症状から始まり、徐々に咳の症状が悪化します。
子どもにおける百日咳の特徴的な咳の症状は、『短い咳が連続的に続き、その後、大きく息を吸い込む時にヒューという音が聞こえ、痰を伴っておさまる』というパターンです。
これらの咳が繰り返し現れるのが特徴で、夜間に症状が強くなることが多いとも言われています。
また、子どもの百日咳は、3つの時期に分けられます。
1.カタル期(風邪のような軽い症状):約1〜2週間
2.痙咳期(激しい咳が続く時期):約2〜4週間
3.回復期(症状が徐々に落ち着く時期):約2〜3週間
このように、治るまでには2〜3ヶ月かかることもあります。
さらに、子どもは大人よりも重症化しやすい傾向があります。
激しい咳が続くことで呼吸が困難になり、息を止めるような『無呼吸発作』や、顔色が紫になる『チアノーゼ』、けいれんなどの症状が現れることもあります。
最悪の場合、肺炎や脳症を併発し、まれに死に至ることもあります。
特に生後3〜6ヶ月の乳児は重症化のリスクが高いため、注意が必要です。
乳児がいる家庭で、大人や兄姉が咳をしている場合は、百日咳にかかっている可能性もあるため、十分に注意してください。
実際、当院でも約3〜4年前に、3ヶ月くらいのお子さんが、呼吸状態が悪化し、大きな病院に紹介した際に、
「百日咳でした」
との返事を受け取ったことがあります。
このお子さんの兄姉が、長期間咳をしていたことが関係していたようです。
百日咳は、血液検査や培養検査で診断されることが多いですが、これらの検査には数日かかることがありますので、即座に診断を下すことが難しいのが現状です。
百日咳の予防方法は?
百日咳は、咳やくしゃみなどの分泌物を介した飛沫感染や、感染者との接触による接触感染が主な感染経路とされています。
また、百日咳の原因菌に対して、アルコール消毒が有効とされているため、他の感染症と同様に、マスクの着用、うがい・手洗い・アルコール消毒、症状のある人との接触を避けるなどの基本的な感染対策が非常に重要です。
さらに、予防としては、ワクチン接種も重要な役割を果たします。
現在、百日咳は五種混合ワクチンに含まれており、生後2ヶ月から接種が可能です。
以前の三種混合や四種混合ワクチンにも百日咳は含まれていたため、ワクチンが接種できる月齢に達したら、早めに接種を受けることが望まれます。
しかし、ワクチン接種後の免疫も、時間と共に低下するため、接種から数年が経過した幼児から10代にかけて、百日咳に感染するケースが増加しています。
現在、百日咳に対するワクチンは、0歳台に3回、1歳台に追加接種を1回と、合計4回の接種が推奨されています。
ですが、この状況を踏まえ、11歳ごろの定期接種で行われる二種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風)を、任意接種の三種混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日咳)に変更するという動きもあります。
ただし、まだ三種混合ワクチンが、定期接種に正式に追加されているわけではありません。
まとめ
以前のマイコプラズマ感染症の流行時と同様に、
「〇〇という病気が流行しています」
と聞くと、その症状(例えば百日咳の場合は長引く咳など)が自分のお子さんに当てはまると、『もしかして…』と不安になりますよね。
マイコプラズマ感染症の流行時も、検査を希望されて受診された方が多くいらっしゃいましたが、検査キットが手に入らず、希望にお応えできないことが多々ありました。
しかし、検査キットが手に入らなくても、症状や周囲の流行状況などをもとに診断を行うことは可能です。
また、百日咳の治療には、抗生物質を使用しますが、下痢などの副作用や薬剤耐性菌の問題があるため、安易に使うことは避けるべきです。
それでも、百日咳の疑いが強い場合には、検査を行わずに、抗生物質を使用することもあります。
これは、医師の判断によりますので、必ずしも処方されるわけではありません。
不安や心配なことがあれば、ぜひ受診して相談してもらえたらと思います。